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修士論文(税法論文)のテーマ選び


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修士論文(税法論文)の作成において、テーマ選びはとても重要です。

選ぶテーマによって、その後の論文の執筆のしやすさが大きく変わるので時間をかけて慎重に選んだ方が良いです。

私も大学院1年次の11月上旬から2月末(テーマ案提出期限)まで、4ヶ月弱たっぷり時間をかけて選定しました。

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1、テーマ選びの段階でどこまでやれるか、テーマ選びの定義

さて、テーマ選びという言葉だけを聞くと、テーマのタイトルが決まっていれば良いように感じまずが、それだけでは不十分です。

選んだテーマがテーマとして成り立たなければなりません。

テーマとして成り立つというのは、ちゃんと税法上の論点があるということです。

論点を明確にした上で、結論(ゴール)とそこに向かうまでの流れ(ストーリー)を、ざっくりと考えるまでをテーマ選びと考えるべきでしょう。

ただ、テーマのタイトルを決めるだけで、調査が足りないとそれがテーマとして成立するか分かりません。
テーマを選んだはいいけど、後で何も論点がないことが発覚。。。ということになりかねません。

大学院によって異なるとは思いますが、テーマの候補を2つ選ばなければならないところもあると思います。
2つ候補を選ぶ場合は、主たるテーマと予備のテーマという位置付けになります。予備のテーマもできる限りの調査した上で決めるのが望ましいです。

主たるテーマが、成り立たなかった場合(無理筋であったり、テーマ性が無いと判断された場合)、すぐにテーマを変更できるからです。

私は予備のテーマについては、主たるテーマほどの調査はしませんでしたが、文献は主たるテーマと同じくらいの数量集めてました。

さて繰り返しになりますが、このテーマ選びは修論作成のかなり重要なウエイトを占めます。
個人的には、テーマ選びで論文の5割ぐらいは決まってしまうと思っています。

テーマが良ければ、中身はどれだけでも肉付けできますが、テーマを間違えると中身を良くしようがないからです。

2、テーマ選びのポイント

テーマ選びのポイントについて自分なりの考えを説明したいと思います。

制約を守る

まず、自分が所属するゼミによっては、ゼミにの法分野(民法ゼミであれば民法)と税法両方を絡めた論文を書かなければならない場合があると思います。

その点は大学院によっても方針が異なるでしょう。

大学院内の制約は守らなければなりません。

テーマ選びのスタンス

「書きたいテーマよりも書けるテーマを選ぶ」というスタンスの方が良いと思います。

自分1人だけで問題意識を持って、それを論点にして論文を書こうとしても、学問的に実績が無い修士の立場では相当に難しいでしょう。

自分1人だけの「問題意識」で論文を書いて認められるのは学問的実績がある人だけだと思います。

テーマとして選ばない方がよいと思うもの

個人的に、テーマとして選ばない方がよいと思うものを上げたいと思います。

●日常業務の中での疑問
単なる疑問となってしまう可能性が高いと思います。上でも書いた通り、自分だけが実務の中で疑問を感じて問題意識を持ったとしても、他にも同様に問題意識を持っている人がいなければなりません。

●特定の判例のみにフォーカスしたもの
判例評釈になってしまい、一般化できない場合が多いです。判例評釈は論文とは違います。

●通達に対する批判
他の方々も問題意識をもって論じられてるものであればテーマとして成り立ち得ますが、独りよがりになってしまう場合が多いと思います。

●学説が多すぎる論点
論点が明確であっても、議論し尽くされておりこれ以上議論の余地がないと言われる可能性があります。どうみなされるかは、指導教授の裁量にもよると思います。

重要なポイント

まだ議論の対立が白熱している論点があるものをテーマとして選ぶのが望ましいです。

・学説がいくつかあり見解が分かれている
・裁判例と学説が逆のことを言っている
・裁判の判決が一審と控訴審でひっくり返っている

ということがあれば論点となり得ます。

論点に対して解釈によって結論を出せるものを解釈論、解釈だけでは不十分で立法によって結論を出すものを立法論と言います。

議論の対立が起こっており、結論が「A又はBのどちらか?」となるような論点の場合、解釈論となる場合が多いです。

例えば論点が
・損金算入すべきか否か?
・所得区分が事業所得か給与所得か?
といったものです。

規定がない、評価方法がはっきりしていないなど、学説においても「議論が起こっているというよりも、答えを模索しているような論点」の場合、立法論になる場合が多いです。
文献を読んでいてふわふわする印象があります。
国内源泉所得、電子商取引、移転価格税制、消費税関連 などは立法論に向かわざるを得ないことが多いと思います。

私のテーマは解釈論でした。
個人的には解釈論の方がやりやすいと思っています。

3、テーマ選びの方法

日常業務での疑問などからテーマを考え出した場合は、同様の問題意識を持っている人がいて議論が起こっているか必ず文献調査しなければなりません。

また、特にこれをやりたいというテーマがない場合は、ゼロから探し出さなくてはなりません。

テーマの探し方について紹介したいと思います。

テーマの探し方

【「租税法」で議論の対立を探す】
金子宏名誉教授の「租税法」という書籍の中で議論の対立を探して、それを起点に文献調査を行いテーマにするか否か決めるというやり方が考えられます。

「租税法」は税法について網羅的に書かれており、税法論文を執筆する上では誰でも必ず読むことになる書籍です。
毎年4月に改正版が発行されています。

本書籍の中では、論点に対して議論が対立している場合や、裁判例で判決が逆転したものに「反対」と書かれています。

この「反対」と書かれた部分は議論の対立が起こっている部分なので、論点となり得ます。

自分が面白そうと思うものについて、書籍内で引用されている文献を調査してみましょう。

【税大論叢を読む】
税大論叢で毎年、税法に関する論文が出されています。

自分が所属するゼミの法分野(民法など)の論文をとにかく読み漁り、論点を探し出すのです。

タイトルを読めば、だいたいどの法分野のものか分かります。

税大論叢の論文の中で引用されている文献で主要なものは集めて調査するようにしましょう。

【第一法規で裁判例を調べる】
第一法規でキーワード検索で裁判例を調べるやり方も考えられます。

例えば、知的財産に関するものを調べたければ「知的財産 税」「特許 税」のように検索します。
すると関連する裁判例とその裁判例が掲載された文献(民集など)も表示されます。

判例評釈が多いものは、周辺に学説が存在し一般論化されている場合もあります。
そういうものは論点となり得ます。

流れ

上記で、テーマの探し方について説明しました。

テーマ探しも含め、その後の流れは以下のようになります。

——————————
テーマを探す

自分が気になる論点について直接的に書いた「基本論文」を見つけて読む

基本論文内で引用・参照されている文献のうち、重要と思われるもの(基本論文の中でもう少し詳しく知りたいと思った箇所)を集めて読む

集めた文献の中に基本論文があれば、またその中で引用・参照されている文献のうち、重要と思われるものを集めて読む

結論を仮決定する

結論に至るまでの流れを仮決定する
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テーマ選びの段階で、その時点で持っている情報を元に、結論(ゴール)とそこに向かうまでの流れ(ストーリー)を考えた方が良いです。

4、まとめ

以上でテーマ選びについて説明しました。

あくまで、通信制大学院で修論を書いた自分の経験に基づくものです。

テーマ選び開始から、テーマ案提出までの期間に指導教授と会わないのでその点一般の通学の大学院と比べて特殊だったかもしれません。
通学であれば、テーマ選びの最中でも小刻みに指導を受けることになるでしょう。

選ぶテーマはボリュームが多すぎてもいけません。1年間で書き終わらなくなってしまうからです。

既に起きている議論に、自分が加わるスタンスでテーマを選ぶようにしましょう。
先にも書いた通り、自分でゼロから論点を作り出すことはほぼ不可能です。

時間をかけてじっくりと文献を色々と読み漁り、慎重に選ぶようにしましょう。