個人事業主は会社の役員などと比べて、事業と生活の距離が近いです。
基本的には、預金口座は事業用と生活用で別々にしておくなど、事業と生活は区別している人が多いと思います。
ただ、個人事業主には「給料を貰う」という概念は無く、事業で貯めたお金を生活に回さなければならないので、必ず事業と生活の間でのお金の移動があります。
給料のように、毎月一定額を生活費に回すというやり方が考えられます。
また、例えば
・お店のレジのお金で町内会費を支払う
・事業の預金口座から自宅の電気料金を支払う
というように事業のお金を直接、生活費の支払いにあてることもあると思います。
このように事業と生活でお金の移動があるときには、事業上の仕訳には「事業主勘定」を使って処理します。
この記事では、個人事業主のみが使う勘定科目「事業主貸」「事業主借」「元入金」の処理についてお話しします。
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1、事業主貸、事業主借の使い方
日々使う生活費勘定は「事業主貸」と「事業主借」の2つになります。
事業主貸
「事業主貸」というのは、事業のお金を生活費にあてた場合に使う科目で、常に借方に来ます。
・事業用の預金から生活用の現金を引出し
・事業用の預金からの自宅の電気料金の支払い
上記のようなケースの場合には全て
(借方)事業主貸 〇〇 / (貸方)預金 〇〇
のように仕訳をします。
「現金引出し」であれ、「電話料金の支払い」であれ生活にあてられるものは一括りに「事業主貸」で処理するということです。
上記が仮に
・事業用の預金から事業用の現金を引出し
・事業用の預金からの事業用の電気料金の支払い
であれば、それぞれ
(借方)現金 〇〇 / (貸方)預金 〇〇
(借方)光熱費 〇〇 / (貸方)預金 〇〇
と借方科目を事業用に厳密に分けることになります。
事業主借
一方で「事業主借」というのは、家計のお金を事業にあてた場合に使う科目で、常に貸方に来ます。
・生活用の預金からお店のレジに現金を入れる
・生活用の預金からのお店の電気料金の支払い
上記のようなケースの場合には全て、貸方科目は「事業主借」となり、それぞれ
(借方)現金 〇〇 / (貸方)事業主借 〇〇
(借方)光熱費 〇〇 / (貸方)事業主借 〇〇
と処理します。
2、事業主勘定は収入にも経費にもならない
事業主勘定は、所得税を計算する過程で出てくる所得には、影響しません。
個人事業主の場合、所得の種類は「事業所得」となり計算式は
事業所得 = 収入 − 経費等
となります。
貸方科目である「事業主借」は収入には含まれず、借方科目である「事業主貸」も経費には含まれません。
すなわち、事業主勘定は事業所得の計算上、蚊帳の外というわけです。
3、期をまたぐときに元入金が増減する
「元入金」というのは、会社で言う「資本金」のようなものです。
ただ、資本金とは違い金額が増減します。
期首と期末の金額は同じで、期をまたぐときに金額が増減します。
*私も最初勘違いしていたのですが、期末に元入金の金額が増減することはありません。期末の元入金の金額は期首と同額です。翌期首に金額が変わっています。
期をまたぐときに、元入金がどのように変化するか説明したいと思います。
期末において
・事業主貸 1,000,000
・事業主借 1,500,000
・元入金 600,000
・所得(収入-経費) 750,000
だった場合、翌期首の元入金の金額は次のように計算します。
・「事業主借」は家計からの入金であり、元入金を増加させます。
・「事業主貸」は家計への出金であり、元入金を減少させます。
・「所得」は事業の儲けであり、元入金を増加させます。
なお、翌期首には「事業主借」「事業主貸」はリセットされて0になります。
4、まとめ
個人事業主のみが使う科目「事業主貸」「事業主借」「元入金」について説明しました。
事業と生活の距離が近い個人事業主であるが故の勘定科目です。
個人事業主の場合は事業と生活を完全に切り離して考えることは困難です。
生活に配慮しながら、事業を続けなければなりません。
事業と生活の間のお金の移動と、これらの勘定科目との関係を理解することが大事です。
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