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法人と個人事業主の車両売却の仕訳の違い


法人も個人事業主も、日々の取引の仕訳をして記録して行くことに変わりはありません。

ただ、同じ取引をした場合でも法人と個人事業主で、仕訳の仕方が若干異なる場合があります。

今日は、車両(固定資産)を売却した場合を例にとり、法人と個人事業主の仕訳の違いを説明したいと思います。

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1、法人が車両を売却した場合

まず法人の場合、車両(固定資産)の減価償却の方法は、税法上定率法で計算するので、会計上の計算もそれに合わせて定率法を用いるのが一般的です。

期首から売却時までの減価償却費の計算は、期首の帳簿価額に一定率を掛けて計算した金額を月割計算します。

例えば、車両を期中に 800,000円で売却した場合を考えてみます。

・期首帳簿価額 600,000円
・耐用年数 6年
・償却方法 200% 定率法
・償却率 0.333
・決算日 3月31日
・売却日 6月30日

この場合、期首(4/1)から売却日(6/30)までは3ヶ月間なので、減価償却費の計算は

期首帳簿価額 600,000円 × 償却率 0.333 × 3 ÷ 12 =49,950円

売却時の仕訳はこのように↓なります(消費税は税抜処理)。

消費税分を除いた入金額(800,000-59,259=740,741円)と帳簿価額(600,000-49,950=550,050円)の差額 190,691円が「固定資産売却益」になります。
(なお、入金額が小さい場合には、逆に「固定資産売却損」が生じる可能性があります。)

上の仕訳を2つに分解して考えた方が分かりやすいかもしれません。

まず3ヶ月分の減価償却の仕訳だけを考えて、次に入金の仕訳を考えます。

また、期首から売却時点までの減価償却費を計上せずに、車両の帳簿価額を期首の金額のまま(600,000円)とした場合、売却時の仕訳は次のようになります。

先の減価償却費の月割分が、固定資産売却益に含まれる形になります。
実務ではこちらの計上の仕方の方が一般的だと思います。

減価償却費を計上する場合としない場合で、固定資産売却益から減価償却費を差し引きした金額は同じです。

●計上する場合
固定資産売却益 190,691円 − 減価償却費 49,950円 = 140,741円

●計上しない場合
固定資産売却益 140,741円 − 減価償却費 0円 = 140,741円

法人税法上も、減価償却費を計上する場合としない場合で「益金-損金」の額は同じになります。

2、個人事業主が車両を売却した場合

さて、次に個人事業主が車両を売却した場合の仕訳について説明します。

個人事業主の場合、車両(固定資産)の減価償却の方法は、税法上定額法で計算するので、会計上の計算もそれに合わせて定額法を用いるのが一般的です。

売却した場合の売却時までの減価償却費の計算は、取得価額一定率を掛けて月割りします。

例えば、車両を期中に 1,200,000円で売却した場合を考えてみます。

・取得価額 1,800,000円
・期首帳簿価額 600,000円
・耐用年数 6年
・償却方法 定額法
・償却率 0.167
・決算日 12月31日
・売却日 3月31日

この場合、期首(1/1)から売却日(3/31)までは3ヶ月間なので、減価償却費の計算は

取得価額 1,800,000円 × 償却率 0.167 × 3 ÷ 12 =75,150円

仕訳は次のようになります(消費税は税抜処理)。

法人の場合には、固定資産売却益に相当する金額を「事業主借」で処理することとなります。

すなわち、固定資産売却益に相当する金額は、事業の損益には影響を及ぼさない(収入にも経費にもならない)ということなのです。

個人事業主の事業から生じる所得は「事業所得」と言いますが、個人事業主が事業で使っている車両の売却による所得は、「事業所得」とは切り離して「譲渡所得」として扱われることになります。

具体的には、消費税分を除いた入金額(1,200,000 - 88,889 = 1,111,111円)と帳簿価額(600,000-75,150=524,850円)の差額 586,261円が売却益となり、そこから50万円を控除した金額が譲渡所得となります。事業所得と併せて課税の対象になります。

なお、売却時点までの減価償却費は事業上の経費なので、必ず計上しなければなりません。
法人の場合のように、期首の帳簿価額のまま計上して、売却益に含めることは不可能です。
(先に述べた通り、個人事業主の場合は固定資産売却益を計上しないからです。)

3、まとめ

法人と個人事業主の車両売却の仕訳の違いについて説明しました。

このように法人の場合の「売却益」を、個人事業主では「事業主借」に含めるのは、法人と個人事業主で税金の計算の仕方が異なるからです。

法人の場合は、所得の計算上、売却益が益金となり減価償却費は損金になります。

●所得 = 益金 - 損金

一方で個人事業主の場合、売却益は事業所得計算上の収入には含まれず、減価償却費は経費となります。

●事業所得 = 収入 - 経費等

事業所得の計算上除外された売却益は、譲渡所得となります。

普段、法人の処理ばかりやっていると、確定申告の時期に個人事業主の一年間の処理をまとめてやるような場合に、ついつい売却損益を計上してしまいそうになります。

うっかり間違わないように、確定申告が違づいてきたら再度要点として確認した方が良いでしょう。
自分自身の意識づけの意味も含めて、今日の記事を書かせて頂きました。