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土地建物の収用があった場合の所得税の確定申告、特別控除、補償金の扱い


静岡県三島市の税理士、松井元(@hajime_matsui)です。
こんにちは!

高速道路など公共のものを作るために、国や地方公共団体が所有者の損失を補償することを条件に、個人の土地建物を強制的に取り上げる場合があります。

これを収用といいます。

収用があった個人は、補償金を貰うので所得税の確定申告が必要になります。

備忘録の意味合いも込めて、どのような手続き、計算が必要かまとめておきます。

土地建物の収用があった場合の所得税の確定申告、特別控除、補償金の扱い

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最大5,000万円の特別控除の特例

個人に土地建物の収用があった場合、不動産の譲渡があったのと同じことになり、譲渡所得が生じます。

そして、以下の要件を満たせば譲渡所得の計算に際して、最大5,000万円の特別控除を受けることができます。

特別控除の特例を受ける要件

特別控除の特例を受けるためには、以下を満たす必要があります。

この特例を受けるには、次の要件すべてに当てはまることが必要です。

(1)売った土地建物は固定資産であること。

(2)その年に公共事業のために売った資産の全部について収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例を受けていないこと。

(3)最初に買取り等の申出があった日から6か月を経過した日までに土地建物を売っていること。

(4)公共事業の施行者から最初に買取り等の申し出を受けた者(その者の死亡に伴い相続又は遺贈により当該資産を取得した者を含みます。)が譲渡していること。

この特別控除の特例は、同じ公共事業で2以上の年にまたがって資産を売るときは最初の年だけしか受けられません。

確定申告書には公共事業の施行者から受けた公共事業用資産の買取り等の申出証明書や買取り等の証明書など一定の書類を付けることが必要です。

(措法33、33の4、措令22、措規14、15、措通33の4-6)

タックスアンサーNo.3552 収用等により土地建物を売ったときの特例より

譲渡所得の計算

所得税の計算は分離課税で、譲渡所得は以下のように計算します。

譲渡所得 = 譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)-特別控除(最大 5,000万円)

所得税額 = 譲渡所得 × 税率

税率は以下のようになります。

●譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える場合・・・税率39%(所得税30%、住民税9%)

●譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年以下の場合・・・税率20%(所得税15%、住民税5%)

特例の適用を受けるための手続

特別控除の特例の適用を受けるためには、確定申告書、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】とともに、以下の書類添付を提出する必要があります(措置法33-4)

・収用証明書
・公共事業用資産の買取り等の証明書
・公共事業用資産の買取り等の申出証明書

これらの3点の書類は、原本を添付する必要があります。

補償金の所得区分

土地建物の収用により、受ける補償金の所得区分はすべてが譲渡所得というわけではありません。

補償金の種類ごとに、所得区分が細かく定められています。

収用等の場合の課税の特例のあらましより

商売を営んでいた人が土地建物を収容された場合、所得区分は以下のようになると考えます。

●対価補償金・・・譲渡所得(最大 5,000万円の特別控除の対象)
●収益補償金・・・事業所得
●経費補償金・・・事業所得
●移転補償金・・・一時所得

移転補償金については、新たに建物を探すための費用(新しいものを取得するのにかかる費用があれば)を差し引きして、残額があれば一時所得になると考えます。

繰り返しになりますが、5,000万円の特別控除の対象となるのは、あくまで対価補償金のみです。

収用で受けるすべての補償が対象となるわけではない点に注意しましょう。

収用証明書に記載された補償金名は上記のとおりとは限らず、場合によってはどの所得区分になるか分からないものもあります。

その場合は、自分で判断せずに税務署に確認をとった方が良いでしょう。

建物を自分で取り壊して更地にして収用されるという案件で、収用証明書に以下のような記載しかなく判断に迷ったケースもありました。

◇宅地
◇建物移転等の補償
◇建物に伴う工作物
◇営業補償
◇動産移転補償
◇移転雑費
◇残地補償

それぞれ以下のように判断するということを税務署に確認しました。

◇宅地・・・土地譲渡の対価補償
◇建物移転等の補償・・・建物譲渡の対価補償
◇建物に伴う工作物・・・建物譲渡の対価補償
◇営業補償・・・収益補償金
◇動産移転補償・・・建物譲渡の対価補償
◇移転雑費・・・移転補償金
◇残地補償・・・土地譲渡の対価補償

収用があった場合の消費税の計算

収用があった場合に受け取った補償金の消費税は以下のようになります。

・対価補償金は建物分は課税、土地分は非課税
・権利の消滅に係る補償金は課税
・営業補償金は不課税
・移転補償金は不課税
・収益補償金は不課税
・経費補償金は不課税

上記のとおり、対価補償金は対価性があるものと考えます。

土地の譲渡対価に相当する部分は非課税となります。

そこは、通常の土地の譲渡の場合と変わりません。

事業用の建物の譲渡対価に相当する部分には消費税が含まれます

2期前の課税売上高が1,000万円を超えている場合は、課税事業者として消費税を支払わなければなりません。

なお、自宅兼店舗の建物が収用されたような場合には、消費税の課税対象となるのは事業用の部分のみです。

譲渡対価を按分して消費税を計算しましょう。

按分比率は、事業を行っていたときの建物の減価償却費と同じ比率で按分すれば良いでしょう。

例えば、建物の譲渡対価が1,100万円で自宅兼店舗で事業と家計の比率が6対4の場合、譲渡対価の事業分は 660万円となり

含まれる消費税は60万円(= 660万円 ÷ 1.1 × 0.1)となります。

なお、収用があった場合に建物を自ら取り壊して更地にして渡した場合であっても、建物に相当する対価補償金にはあくまで建物の譲渡もあったものとして消費税がかかります

更地にして売った場合、通常は土地の譲渡として非課税になりますが、収用の場合の扱いは違いますので注意が必要です。

まとめ

個人につき土地、建物の収用があった場合にどのような手続き、計算が必要かまとめました。

収用は税理士の実務でも、出くわす回数は決して多くはありません。

忘れないように備忘録の意味も込めてこの記事を残します。

編集後記

昨日(3/8)は自分自身の確定申告を終わらせるために、代理送信の直前までの申告書の作成をしました。

夜にはインスタグラムでサブアカとして、カラオケ専用のアカウントを作成。

インスタの楽しみ方を研究します!