税理士試験の税法2科目免除のために、大学院(法学専攻)で修士論文を書いてこの3月に卒業しました。
さて、自分は元エンジニアなのですが、最初メーカーで働き始める前にも大学院(工学専攻)を卒業しています。
私が在籍した大学の工学部の学生は、殆どの人が大学院まで進学して卒業した後に、企業に就職して行きました。
工学部には企業への就職の際に学校推薦なる制度があったのです(今もあると思います)。
自分が就職を希望する企業の学校推薦枠の中に入れれば、その企業に優先的に採用してもらえるという制度です。
その推薦枠は企業毎に人数が決められており、希望する学生の人数がオーバーした場合には、学部生よりも大学院生の方を優先的に枠に入れていく方針だったため、大学院卒の方が学内の推薦枠を勝ち取りやすいということで、皆大学院に進学するのがトレンドになっておりました。
昔は、自分が税理士になるなど微塵も考えてなかったのですが、諸々あり現在税理士になる過程で法学専攻を卒業したことによって、地味に理系と文系のダブルマスターとなったわけです。
●理系 工学専攻
●文系 法学専攻
さて、今日は理系大学院と文系大学院の違いについて、自分の経験と聞いた話しをもとに書きたいと思います。
1、進学目的
理系大学院
学部から大学院に進学する学生は、文系よりも理系の方が全然多いです。
工学部の場合、大学院(修士課程)に進学する目的の多くは先に書いたように、企業への推薦枠を獲得するためです。
(実際、メーカーの技術職は院卒が多いです。)
大学院生(修士課程)になってからは、もちろん研究をしっかりやらなければ卒業はできませんが、その後研究者の道を目指して博士課程まで進学する人の割合は低いです。
博士課程まで出たら、その後大学に残るか、企業に研究職として就職するかのどちらかになります。企業の博士課程卒業での採用も一定数はあります。
社会人になって、働きながら修士課程に入学するケースはまず無いです(聞いたことありません)。
博士課程であれば、企業から社会人ドクターとして来ることもありますが、企業で働きながら修士課程に通うメリットはあまり見当たりません。
文系大学院
文系全般、学部から修士課程に進学する学生の割合は低いです。
理系の場合は、学部から修士課程に進学することである意味社会に受け入れられやすくなるのに対し、文系の場合は一般企業への就職は不利になると言われています。
ですので、学部から修士課程に進学する人は研究者を目指している人が殆どだと思います。
一方で社会人になって、働きながら大学院に通うケースは割と耳にします。
私のように、税理士試験の2科目免除を受けるために法学専攻に進学する人は一定数いますし、MBA取得のために経営学専攻に在籍する人もいることでしょう。
学部からの進学よりも、社会人になってからの進学の方がニーズが多いと思います。
2、研究内容
理系 工学専攻
工学専攻の研究は、自然科学の範囲になります。
研究のバックグラウンドは、製品の新規開発や性能向上などの場合が多く、その研究成果が将来役立つ可能性があります。
私は、熱流体工学という分野の研究室に属してこり、カーエアコン部品の性能向上に繋がる研究をやっていました。
そのこともあり、カーエアコン部品を作っている会社を希望して入社し、その関係の仕事に就きました。
文系 法学専攻
法学専攻の研究は、自分なりの法律の解釈を作り出すことです。
実績がある先生方の論文であれば、裁判例の判決要旨の中で考え方を取り上げられる場合もあります。
修士論文では、裁判例や学説で議論されている論点に自分も加わり、自分なりの考えを導き出します。
3、修士論文作成に向けて日々やること
さて、理系も文系も修士課程の場合、修士論文を書き上げなければなりません。
その修士論文作成に向けてやることの違いについて書きたいと思います。
理系が工学専攻、文系が法学専攻の前提です。
工学専攻
工学専攻の研究は、実験を行いデータを測定してそのデータに対する考察を加えることです。
研究室の中で研究テーマは最初から決まっており、その各研究テーマに学生が複数人割り当てられるので、通常2〜3人のチームで1つの研究を行うことになります。
(例えば、M2、M1、B4 の3人)
測定したデータは、新しい発見になります。
データが無ければ、修士論文は形をなさないのでデータが命と言っても過言ではありません。
日々やることは
・実験装置のメンテナンス
・実験、データ測定
・データ整理
になります。これらのことを2年間続けて最後に修士論文にまとめます。執筆期間は3ヶ月ほどでした。
全ページの半分以上は図とグラフになります。
法律論文のように引用・参照のルールは厳しくなく、また引用等する機会も少ないです。
自分のチームで測定したデータに対して、自分なりの考察をすることが求められます。
法学専攻
法学専攻の研究は、自分で研究テーマを選定して、論点に対する考察をします。
ゼミでテーマの分野に対する縛りがある場合もありますが、工学専攻の場合と違いテーマを与えられることはありません。
チームで研究を行うわけでもなく、修士論文は自分1人で作り上げます。
論点がなければ論文にならないので、論点が命と言っても過言では無いです。
日々やることは
・文献の収集
・収集した文献の読込み
・執筆
になります。
1年次の後半からこれらのことに取り組み、執筆期間は8ヶ月ほどになりました(働きながら)。
理系の場合と違い、図やグラフは殆ど使わず文章の量が多いです。
引用・参照のルールが厳しく、また引用等する文献の数も多いです。
学説や裁判例における解釈の上に、自分なりの解釈を加えることになります。
工学専攻と法学専攻 比較
工学専攻と法学専攻の修士論文の作成に関する比較をすると、以下の表のようになります。
なお、トータルの労力は工学専攻(理系)の方が大きいです。
実験を行いデータを測定することには、どうしても時間がかかるのです。
実験が上手くいかなければ丸一日何も進まないこともあります。
4、まとめ
理系大学院と文系大学院、どちらが大変かということは一概には言えません。
研究の内容も性質も異なるからです。
工学専攻は、実験してデータを測定・整理することに時間がかかりますが、少なくとも修士課程は、普通にやっていれば卒業できないことはまず無いと思います。
社会人になってから入った法学専攻は、働きながらでしかも通信ということもあり大変でした。
仕事との両立が困難で、毎年一定数の人が留年してしまいます。
理系でも文系でも、大学院に入ったら研究をしなければなりません。そして、研究というのはじっくり時間をかけて取り組まないとアウトプットできないので、決して油断などせずにしっかりやることに尽きると思います!!