確定申告真っ只中です。
個人事業主の方は一年間の所得税額を計算して税務署に申告しなければなりません。
さて、今日は個人事業主の予定納税について説明したいと思います。
1、所得税の予定納税とは
予定納税とはざっくり言えば、前期に所得税が多かった人が、確定申告よりも前に今期の所得税の一部をあらかじめ納付することです。
予定納税の回数は第1期と第2期の2回で、法定納期限は
・第1期分 7/31
・第2期分 11/30
です。
サラリーマンの場合は源泉徴収されているので、一般的には予定納税の必要はありません。
個人事業主で前期の所得税が多かった人が予定納税をすることになります。
予定納税がある場合には、確定申告書の「㊻ 所得税及び復興特別所得税の予定納税額(第1期分・第2期分)」に予定納税額を入力します。
予定納税額は、「予定納税基準額」をもとに計算されます。
第1期分、第2期分とも「予定納税基準額」の3分の1ずつの金額を納めることになります。
2、予定納税の条件、予定納税基準額の計算
予定納税をする必要があるのはどのような人か?国税庁のHPで確認できます。
以下のように示されています。
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予定納税基準額(特別農業所得者以外)は、次の(1)又は(2)のようになります。
(1) 次のいずれにも該当する人は、その人の前年分の申告納税額がそのまま予定納税基準額となります。
イ 前年分の所得金額のうちに、山林所得、退職所得等の分離課税の所得(分離課税の上場株式等の配当所得等を除きます。)及び譲渡所得、一時所得、雑所得、平均課税を受けた臨時所得の金額(以下「除外所得の金額」といいます。)がないこと。
ロ 前年分の所得税について災害減免法の規定の適用を受けていないこと。
(2) 上記(1)に該当しない人は、前年分の課税総所得金額及び分離課税の上場株式等にかかる課税配当所得等の金額に係る所得税額(除外所得の金額がある場合には、除外所得の金額がなかったものとみなして計算した金額とします。また、災害減免法の規定の適用を受けている場合には、その適用がなかったものとして計算した金額とします。)から源泉徴収税額(除外所得の金額に係るものを除きます。)を控除して計算した金額及び当該金額の復興特別所得税額の合計額が予定納税基準額となります。
上記(1)又は(2)の予定納税基準額が15万円以上になる人は、予定納税が必要になります。予定納税額は、所轄の税務署長からその年の6月15日までに、書面で通知されます。
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「予定納税基準額」が15万円以上の人は、予定納税が必要になります。
そして、この「予定納税基準額」の計算方法は、次の条件イロに該当するか否かによって2パターンに分かれます。
イ、前年分の所得金額に、分離課税の所得(上場株式等の配当所得等を除く)、譲渡所得、一時所得、雑所得などが無い
ロ、前年分の所得税について災害免除法の規定の適用を受けていない
イ ロ 両方に該当する場合
上記のイロ両方に該当する場合、前年の確定申告書の「申告納税額」がそのまま「予定納税基準額」となります。
例えば、前年の所得の種類が事業所得のみ(一般的な個人事業主)の場合を考えてみます。
所得税は以下の式により計算します。
・売上 15,000,000円
・経費 5,000,000円
・青色申告特別控除 650,000円
・所得控除 730,000円
・源泉徴収税額 111,250円
の場合
・所得(事業所得)=売上ー経費ー青色申告特別控除
=15,000,000円ー5,000,000円ー650,000円
=9,350,000円
・課税所得=所得ー所得控除
=9,350,000円ー730,000円
=8,620,000円
・所得税=課税所得×所得税率ー税額控除
=8,620,000円×23%ー636,000円
=1,346,600円
となります。
復興特別税は所得税の金額の2.1%なので
・復興特別所得税=所得税×2.1%
=1,346,600円×2.1%
=28,278円(円未満切捨て)
申告納税額は
・申告納税額=所得税+復興特別所得税ー源泉所得税
=1,346,600円+28,278円ー111,250円
=1,263,628円
=1,263,600円(100円未満切捨て)
となります。
前期の確定申告書が下のようにあったとした場合、「㊺ 所得税及び復興特別所得税の申告納税額」は1,263,600円となり、この金額がそのまま今期の「予定納税基準額」となります。
イ ロ のいずれか一方又は両方に該当しない場合
先に示したイロのいずれか一方又は両方に該当しない場合について説明します。
イ、前年分の所得金額に、分離課税の所得(上場株式等の配当所得等を除く)、譲渡所得、一時所得、雑所得などが無い
ロ、前年分の所得税について災害免除法の規定の適用を受けていない
例として、事業所得の他に譲渡所得がある場合を考えてみます。
個人事業主の本業の所得は事業所得ですが、他に車を売却した場合などには譲渡所得が発生します。
その場合は、譲渡所得を除いた所得をもとに「予定納税基準額」を計算していくことになります。
先の場合と同じく
・売上 15,000,000円
・経費 5,000,000円
・青色申告特別控除 650,000円
・所得控除 730,000円
・源泉徴収税額 111,250円
とします。
上記にさらに、車の売却益があった場合を考えてみます。
・売却益 650,000円
*所有期間が5年以内の短期譲渡
の場合、譲渡所得は
・譲渡所得=売却益ー特別控除額
=650,000円ー500,000円
=150,000円
となります。
先に計算した事業所得と合わせて
・所得の合計=事業所得+譲渡所得
=9,350,000円+150,000円
=9,500,000円
となります。
さて、「予定納税基準額」の計算は所得の合計(9,500,000円)から、分離課税に係る所得や雑所得、一時所得、譲渡所得を控除してから計算しなければなりませんでした。
この例だと
控除後所得=所得の合計ー譲渡所得
=9,500,000円ー150,000円
=9,350,000円
となります。
・課税所得=控除後所得ー所得控除
=9,350,000円ー730,000円
=8,620,000円
前年の確定申告書が下のようにあったとした場合、下のB(所得の合計)からA(譲渡所得)を控除した金額が上の式の控除後所得となります。そこから C(所得控除)を控除した金額を課税所得として計算するということです。
つまり、事業所得のみを所得として所得税を計算していくことと同じことになります。
・所得税=課税所得×所得税率ー税額控除
=8,620,000円×23%ー636,000円
=1,346,600円
となります。
復興特別税は所得税の金額の2.1%なので
・復興特別所得税=所得税×2.1%
=1,346,600円×2.1%
=28,278円(円未満切捨て)
予定納税基準額は
・予定納税基準額=所得税+復興特別所得税ー源泉所得税
=1,346,600円+28,278円ー111,250円
=1,263,628円
=1,263,600円(100円未満切捨て)
となります。
「予定納税基準額」は、譲渡所得がない場合と同じ金額になります。
確定申告書の、申告納税額がそのまま「予定納税基準額」とはなりません。
3、予定納税額の計算
さて、「予定納税基準額」が15万円以上の場合予定納税が必要になることは先に言いました。
予定納税額は、第1期分、第2期分とも「予定納税基準額」の3分の1ずつの金額になります。
確定申告では、申告納税額(1年間の所得税額)を計算し、その金額から予定納税額を控除した金額を納めることになります。
なお、確定申告書の「㊻ 所得税及び復興特別所得税の予定納税額(第1期分・第2期分)」は、確定申告の時期に予定納税額が未納付だった場合も入力しなければなりません。
確定申告で計算した「㊼ 納める金額」と予定納税額は別の税金として扱われます(延滞税なども別々にかかってくる)。
したがって、未納付でも納付したものとして確定申告書には入力しておかなければならないのです。
(下は当期の確定申告書とします。)
4、まとめ
実際に確定申告を行う場合には、税務ソフトを使うので予定納税額は自動的に計算されます。
なかなか、上記の計算過程を自分でやることはないとは思います。
ただ、今日は自分自身の備忘録の意味も兼ねて、所得税の予定納税額の計算方法について整理させて頂きました。
税金の基本については、こちらの本↓が分かりやすいです。