私は、税理士試験の税法2科目免除のために、大学院で修士論文(税法論文)を執筆しました。
テーマは所得税法関係でしたが、執筆に当たり単行本、雑誌論文、裁判例と数多くの文献を集めました。
今日は、所得税法関係のテーマを執筆する場合に参考となる書籍を紹介したいと思います。
1、所得税法関係のテーマに参考となる書籍
金子宏『租税法』(弘文堂,第22 版,2017)
所得税法関係のテーマでもそれ以外のテーマであっても、税法論文の執筆にあたり誰でも必ず目を通すことになる書籍です。
1000ページ以上にわたり、租税法全般について網羅的に整理されています。
自分のテーマの論点について書かれている部分をよく読む必要があります。
また、そこで引用・参照している文献は自分のテーマを進めるに当たり重要なので集めた方が良いです。
余裕があれば修士論文の作成が始まる前の段階でも、論点を意識しながら読むと良いでしょう。
佐藤英明『スタンダード所得税法』(弘文堂,第2版,2016)
所得税法に特化した書籍です。
所得税の基本的概念や所得の種類、所得税額の計算などについて、図や事例を交えながら丁寧な説明がなされており分かりやすいです。
私は図が大好きなので、とても読みやすかったです。
また、事例は1つ1つ現実に即して作成されており、それに対する説明もプロセスがしっかりしているので初心者にも読みやすい本だと思います。
他にも、個々の論点で重要な裁判例についても示されています。
私は、譲渡所得、給与所得について調べましたが、特に給与所得の意義に関して事業所得との違いを取り上げながら、非常に深い説明がされており参考になりました。
執筆中、最後の最後まで開くことが多かったです。
注解所得税法研究会編『注解所得税法』(大蔵財務協会,五訂版,2011)
所得税法に関して、特に個々の10種類の所得の説明がかなり詳しく書かれています。
自分の研究テーマに関して言えば、譲渡所得と給与所得について調べるために使いました。
譲渡所得については約150ページ、給与所得は約100ページにわたって書かれています。
特に給与所得の意義や、給与と呼ばれるものの範囲について理解して整理するために参考になりました。
森谷義光=北村猛=一色広己=田中健二編『所得税基本通達逐条解説』(大蔵財務協 会,平成26 年度版,2014)
所得税基本通達と個々の通達に関する解説が、1000ページ以上にわたり書かれています。
通達の解説には、「その通達は何を明らかにしているのか」「その通達をどのように解釈するのか」が示されています。
自分のテーマと関連する通達に対する考えを述べたい場合に有用です。
*ちなみに通達は法律とは異なります。
清永敬次『税法』(ミネルヴァ書房,第7 版,2007)
こちらも、所得税法に限らず租税法全般について書かれています。
私の場合、所得税法に関して他の学説との比較のために引用・参照することがありました。
2、まとめ
今日は、私が所得税法関係の修士論文(税法論文)の執筆に当たって、実際に購入した本の一部を紹介させて頂きました。
今、改めて考えると
●金子宏『租税法』(弘文堂,第22 版,2017)
●佐藤英明『スタンダード所得税法』(弘文堂,第2版,2016)
上記の2冊は持っていた方が良いと思います。
また、
●注解所得税法研究会編『注解所得税法』(大蔵財務協会,五訂版,2011)
●森谷義光=北村猛=一色広己=田中健二編『所得税基本通達逐条解説』(大蔵財務協 会,平成26 年度版,2014)
に関しては、分量がかなり多いので自分のテーマに必要な部分だけを図書館でコピーすれば事足りるかもしれません。
以上
所得税法関係のテーマで、書籍は何を読めばよいか分からないという方がいましたら、今日紹介させて頂いたものが適していると思います。