消費税の納税義務者は中間納付をしなければならない場合があります。
中間納付というのは、消費税の納付を確定申告納付の1回だけではなく、確定申告までの間に何回かに分けて納付することです。
今日は、消費税の中間納付について、中間納付額の計算過程などを示しながら説明したいと思います。
1、消費税の中間納付の回数
中間納付が必要な場合と回数について説明します。
前年の確定消費税額(国税の年税額)に応じて、中間納付の有無と必要な場合における回数が決められています。
国税庁の HP を確認すれば分かりますが、次のようになっています。
確定消費税額(国税の年税額)が48万円以下の場合は中間納付は不要ですが、金額が大きくなると中間納付の回数が増え4,800万円超だと年11回(毎月)中間納付しなければならなくなります。
確定申告書で示しながら説明します。
前年の消費税の確定申告書が以下のようになっていた場合、「⑨差引税額」が確定消費税額(国税の年税額)を表しますので、この金額が中間納付の有無と必要な場合の回数を決定する上での基準になります。
(上の表により判断できます。)
なお、地方消費税も含めた金額(上の表の()内の金額)で判断する場合は、地方消費税の年税額を表す「⑳納税額」を「⑨差引税額」に足した金額で判断することになります。
前期の確定申告書が上記のケースでは、「⑨差引税額」が 2,240,000円なので48万円超~400万円未満の範囲に該当し、中間納付(中間申告)の回数は1回、1年間の合計の納付(申告)回数は2回となります。
2、消費税の中間納付額
さて、次に消費税の中間納付額の計算方法について説明します。
中間申告には「前年の実績による方法(予定申告方式)」と「仮決算による方法」の2つの方法があります。
前年の実績による方法(予定申告方式)
前年の実績による方法(予定申告方式)は、先に示した中間申告のタイミングで前期の確定消費税額(国税の年税額)をベースに中間納付額を計算する方法です。計算方法が決まっているので、前期の確定消費税額(国税の年税額)が明らかであれば自動的に計算できます。
中間納付の回数別にそれぞれ次のような金額になります。
仮決算による方法
一方で仮決算による方法とは、中間申告期間で仮に決算を行い、消費税額を計算する方法です。
実際の決算の時と同じ処理が必要になるので、時間もかかり手間なのであまり採用されていません。
私自身も実務で行った経験がないです。
3、「前年の実績による方法」での中間納付額の計算方法
さて、前年の実績による方法での消費税の中間納付額をどのように計算するか示しておきたいと思います。
一般的には実務でこの計算を自分で行うことはあまりないと考えられます(納付の時期になったら、税務署から中間納付額が印字された納付書が送られて来るため)。
ただ、前年の確定申告書のどの金額を使って計算すればよいか、端数処理のをどのように行うか、など自分自身の備忘録としても記録しておきたいと考えます。
中間納付が1回の場合
中間納付が1回の場合の中間納付額の計算について、確定申告書を見て数値を確認しながら説明したいと思います。
例えば、前年の確定申告書が次のようになっている場合を考えてみます。この場合、確定消費税額(国税の年税額)である「⑨ 差引税額」が48万円超~400万円未満の範囲にあるので、中間納付の回数は1回でしたね。
今期の中間納付額の計算は、
・国税(A) 確定消費税額(Y)の 6/12
・地方消費税(B) 国税の中間納付額(A)の 17/63
です。
*地方消費税の計算で国税に17/63するのは、消費税8%のうち国税分の 6.3% と地方税分の 1.7% の比率から来ています。
単純な数式で言えば、
・A = Y × 6/12
・B = A × 17/63
となりますが、端数処理で注意が必要です。
国税の計算をする場合は、A = Y × 6/12 としたときは、まず X を12で割った金額の円未満を切り捨てます。そしてその金額に6を掛けます。
このケースで言えば、確定消費税額(Y)は 2,240,000円となります。
国税の中間納付額の計算は
A = Y × 6/12 = 2,240,000円 × 6/12
この計算を行う場合は
まず
2,240,000円 ÷ 12 = 186,666円(円未満切捨て)
とします。
次に
186,666円 × 6 = 1,119,996円= 1,119,900 円(100円未満切捨て)
と計算します。
地方消費税の中間納付額の計算は
B = A × 17/63 = 1,119,900 円 × 17/63 = 302,100(100円未満切捨て)
ここでは「× 17/63」の部分は、先にAに17を掛けてから63で割っても、先にAを63で割ってから17を掛けても、どちらでも良いです。
最後に100円未満を切り捨てれば金額は同じになります。
計算の過程で端数が出たとしても、とりあえず最後まで計算してから、100円未満を切り捨てれば良いということです。
さて、このように計算した中間納付額は今期の消費税の確定申告書に入力します。
国税の中間納付額Aを「⑩ 中間納付税額」
地方消費税の中間納付額Bを「㉑ 中間納付譲渡割額」
の部分に入力します。
そして、今期の確定消費税額(国税の年税額)と地方税の年税額が確定して、その金額からそれぞれ中間納付額を控除した金額が、今期の確定申告納付税額になります。
確定申告納付税額は
・国税を申告書の「⑪ 納付税額」
・地方消費税を申告書の「㉒ 納付譲渡割額」
に記載します。
そして、国税と地方消費税の合計を「㉖ 地方税及び地方消費税の合計(納付又は還付)税額」に記載します。
中間納付が3回の場合
例えば、前年の確定消費税額(国税の年税額)が 14,049,000円、地方消費税の年税額 3,791,000円の場合を考えてみます。
今期の中間納付額の計算は、
・国税(A) 確定消費税額(Y)の 3/12
・地方消費税(B) 国税の中間納付額(A)の 17/63
です。
国税の中間納付額の計算は
A = Y × 3/12 = 14,049,000円 × 3/12
この計算を行う場合は
まず
14,049,000円 ÷ 12 = 1,170,750円(円未満切捨て)
とします。
次に
1,170,750円 × 3 = 3,512,200円(100円未満切捨て)
と計算します。
地方消費税の中間納付額の計算は
B = A × 17/63 = 3,512,200円 × 17/63 = 947,700(100円未満切捨て)
となります。
1回の中間納付額は上記のとおりですが、年に3回中間納付があるので上記金額に3を掛けた金額が年間の中間納付額になります。
4、まとめ
今日は、 消費税の中間納付について、中間納付額の計算過程などを示しながら説明しました。
中間納付額の計算は、まず国税分を計算してその国税の中間納付額をもとに地方消費税分を計算します。
中間納付の回数が1回の場合と3回の場合について計算方法を示しましたが、回数が12回の場合も計算の仕方(計算手順、端数処理など)は同じです。
一度、中間納付について整理して理解して頂ければと思います。