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役員に対する給与の税務上の取扱いについて整理(中小企業に関して)


社長や専務などの役員も他の従業員と同様に、会社から給与を貰います。

ただ、一般の従業員に対する給与と違い、役員に対する給与は税務上の制約があります。

会社の所得は

所得=益金-損金(≒収入-費用)

となり、この所得に税率を掛けて法人税額が計算されます。

損金の額が大きいほど所得が小さくなり、法人税額も小さくなります。

役員に対する給与は、法人税法上全てが損金となるわけではありません。

この記事では、役員に対する給与の税務上の取扱いについて整理しておきます!

なお、「一人社長として会社を作ったばかりの人が役員報酬をどのように決めればよいか?」ということについて、Youtube に動画もアップしておりますので、よろしければどうぞ!

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1、中小企業の社長は自分が自分に対して給与を支給

中小企業は、家族経営の場合が多いです。

家族経営でなくても、社長と他の役員が株式を保有し「経営者=株主」となっている場合がほとんどです。

そのため、外部からの目は入りません。

社長1人だけの会社の場合は、なおさらそうでしょう。

したがって、多くの中小企業では、社長が自分の給与を自分で決めることになります。

もし仮に何の制約も無かったら、何が起きるでしょう?

例えば、上半期に会社の売上が好調で資金面で余裕があるから、下半期は社長の給与をアップさせたいと思ったとします。

制約が無く、給与が全て損金になるとすると、アップさせた分だけ所得は小さくなり法人税額も下がります。

意図的に所得を減らされたりしたら、国税サイドは困るので、こういう税金逃れができないようにしてあるのです。

役員に対する給与は、定時株主総会で決議した月額で一定にしなければなりません。

期中に給与をアップさせても、定時株主総会で決議した金額を超えた分は損金にはなりません。

Image(326)

逆の場合も制約があります。

社長への給与の支払いがちょっと厳しいからといって給与の月額を下げたら、その減額後の月額を超えて支払っていたそれまでの月の超過分は損金にはできません。

(後で説明しますが、業績が著しく悪化した場合には、減額してもそれまでの月の分も全額損金にできるとされています。)

Image(327)

2、役員に対する給与の法人税法上の取扱い

役員報酬で損金になるものは、以下の3つで不相当に高額でないものです。

①定期同額給与
②事前確定届出給与
③利益連動給与

以下で①②について説明します。

*上記のうち③利益連動給与は、中小企業ではほぼ無いケースですので割愛します。

参考:国税庁のHP

①定期同額給与

1ヶ月以下の一定の期間(普通は1ヶ月)ごとに支給される給与です。

普通の従業員の毎月の給与と同じイメージです。

ただ、従業員の給与と異なる点は、全額損金にするためには毎月の支給額を一定にしなければなりません。

決算の約2月後に行われる株主総会で毎月の支給額を決議し、次の株主総会までの1年間同じ支給額を保つ必要があります。

3月決算の会社の場合、株主総会が5月下旬に行われます。

役員の給与について決議したら、翌月の6月分からその金額での支給が始まります。

期中に、仮に株主総会で決議した支給額以上を支給した場合、その超過分は損金算入できません。

お金が出ていくのにもかかわらず、所得の計算上マイナスされないということです。

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この定期同額給与を改定できるのは、以下の3つのケースです。

定時の改定

先にも示した定時株主総会での決議による改定です。

決算の約2月後に行われる定時株主総会で毎月の支給額を決議し、その翌月から改定後の支給額で支給されます。

Image(329)

臨時改定

役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情によりされたその役員に係る定期給与の額の改定のことを言います。

先代の社長が亡くなり常務が新たに社長に就任したことによって給与を増やす場合や、役員が不祥事を起こして給与を下げる場合などが該当します。

臨時株主総会での決議により改定後の支給額を決定することになります。

業績悪化による改定

法人の経営状況が著しく悪化したことその他これに類する理由によりされた改定です。

「法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標に達しなかったことなどはこれに含まれない」とされていますが、「経営状況が著しく悪化」という要件の判断が難しいです。

あまり現実的ではないかもしれません。

私は実務では経験がありません。

②事前確定届出給与

事前に所轄税務署長に、「所定の時期に確定額を支給する旨の定め」に関する届出を提出することによる給与のことをいいます。

・株主総会での決議から1ヶ月を経過する日

又は

・会計期間開始の日から4か月を経過する日

のいずれか早い日が届出の期限になります。

いわゆる役員賞与というもので、事前に上記の届出をしたものだけが損金として認められます。(従業員に対する賞与とは異なります。)

会社が利益を出したから、ぽんっと役員に賞与を出すことも不可能ではないですが、その場合は届出を出してないので損金算入できません(この場合も、お金が出ていくのに所得の計算上マイナスされないということになります。)

なお、定期同額給与と同様に臨時改定、業績悪化による改定は認められています(業績悪化による改定は同じく判断が難しいです)。

3、まとめ

実務では、役員に対する給与は全額損金にできるように支給します。

自分の経験では、これまで定期同額給与以外の給与を支給するというケースは聞いたことありません。

一般の従業員と同じように賞与(ボーナス)を取りたい場合には、賞与分も含めて株主総会で定期同額給与を決定することが多いようです(そうすれば税務署への届出は不要です)。

なお、「一人社長として会社を作ったばかりの人が役員報酬をどのように決めればよいか?」ということについて、Youtube に動画もアップしておりますので、よろしければどうぞ!

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